「三島由紀夫」とはなにものだったのか
橋本 治
というわけで、久しぶりに評論をよんでみました。
実は私は、三島由紀夫の小説は
「仮面の告白」と
「憂国」しか読んだことがないのです。
そして橋本治は
桃尻語訳「枕草子」しか読んだことありません。
こんな私ですが、本屋でこの本を迷わず買って来たのは
題名も惹かれたし、いつか三島由紀夫を読んでみたいからです。
昔、澁澤龍彦の
「偏愛的作家論」とか
その他のエッセーで三島由紀夫との交友を知り、
三島由紀夫を読んでみるかと思い立ちました。
まぁ処女作から読もうと「仮面の告白」を読み、
随分生々しい話だなと思いながら「憂国」を読んだら
もっと生々しい描写に断念してしまったという苦い記憶があります。
この本の作者も最初投げ出してしまったと言う箇所を読んで
これなら何とかなるかと思って読み始めることにしたのですが・・・
今考えると作者は別に描写にやられたわけではないですよね。
何のシンパシーを感じて私は買ってきたんだろう・・・謎です。
読んだことは無いくせに、「豊饒の海」のあらすじや評論を読んで
内容は知っていましたから、この本は特に心配なく読めました。
450ページほどの厚い本でしたが、読むのが苦にならないくらい面白く、
がむしゃらに読みました。
橋本氏によると、三島由紀夫は塔に監禁され助けて欲しいのに
いざ助けが来ると
その助けが死ぬことを望んでいる王子だったらしいです。
何と複雑な!とっとと救出されろと思いましたが
その観点から読むと「春の雪」の煮え切らない展開が
「禁色」が観念小説になった理由がわかります。
この辺の作者の話の進め方がうまいなと感じました。
読み終わってから澁澤龍彦の「豊饒の海」や「午後の曳航」の評論と
この本の評論を読み比べてみたら
切り方が違うとこんなに違うのかと思うくらい温度差がありました。
三島由紀夫の生前に交流があったか
無かったかという違いでは済まされないくらいです。
もし三島由紀夫の生きている間にこの本が出たら
三島由紀夫は絶対に嫌がると思います。
それくらい容赦ない本です。
装丁も三島由紀夫の新潮文庫の表紙の装丁
(たとえば
こんな感じ)を取り入れていて、
新潮文庫のこだわりを感じました。